金網の向こうに広がる青い荒野。
見つめているだけじゃ草を掻き分けて走ることは出来ない。
小さな頃から想い続けた荒野、そこは本当に危険な所なのか?
あの日に比べると、僕はずっと成長していた。
今ならこの金網に足を掛けて遥か向こうまで走って行ける。
足を踏み出すと心臓は高鳴って、視界は色で満ちてくる。
金網の頂上へ登ると風が荒野を翔けていく。
僕を縛り付けていた何かが、するすると解けて飛んでいった。
熱い頬を冷やす荒野の風と、白く輝く地平線が僕を呼んでいる。
既に迷いはない。
金網を蹴って、荒野の海へ飛び込んだ。
この向こうにあるものを見に行こう。
走る、走る。
白い光は膨らんで、僕の身体を覆いつくす。
荒野の果てる場所を僕は見た。
むせ返るような緑と眩しい光の向こうにあったものとは…。