君が俺の隣に座る。
今思うとすごく幸せな席だった。
君はいつも静かで真面目に授業を聞いていた。
杉村綾子。見た目は少し派手で顔の化粧はナチュラルメイク。
でも頭は良くて、しっかりした子だった。
昼になるといつも拓也と飯を食っていた。
「なぁ、ひで。お前の席どうよ?」
「あ?結構いい席だぞ。」
「だよな〜やっぱ後ろの席はいいよな〜。しかも隣は杉村だし。」
「なんだ?お前杉村がタイプなの?」
「いいや〜ただ可愛いってだけ。」
「ふ〜ん。」
「なに?ひで!!お前杉村が好きなの?」
拓也のいきなりの質問にちょっとビックリした。理由はわからなかった。
「はっ?んなわけねぇーじゃん」
「だよな〜ひでは女興味なさそうだし。」
そう。俺は昔から女とはあまり話さないから、よく女に興味のないスポーツマンと呼ばれていた。
「あっ!ひでチャイム鳴るよ」
「マジで?じゃあ教室戻るか。」
「おう。」
そう言って二人は教室に戻った。5校時が始まり席に着くといつものように授業が始まる。
相変わらずとなりの君は真面目にノートをとる。
でも、最近気付いた。
君はたまに何処かを見る。
黒板じゃない何処かを。
あまりに不思議なったもんだから聞いてみた。
「お前って天然?」
初めて俺に話しかけられたせいか、ビックリしたようにサッと俺の顔を見た。
「は?」
聞こえてなかったみたいだ。
「お前って天然なのか?」
「違うしー」
「じゃ、何処見てたの?」
「??何処も見てないよ。自分の世界に入ってた。(笑)」
やっぱ天然だ。
「ってかひでと話したの初めてじゃない?」
「そう?話したことなかったっけ?」
とぼけて見せた。
「話したことないって!」
「そっか。」
「ひでって女の子と話すんだね。」
「はっ!?馬鹿にしてんの?」
「違う。ひでが女の人と話してるとこ見たことないから。っていうか『俺に話しかけるな』オーラでてるし。」
そう言って君が笑った。
その笑顔は可愛くて、いつも静かな君からは感じられない可愛さだった。
これが俺らが初めて交した会話だった。