龍雅「明日にはここを発ちます……」
ゲンの表情はその言葉を予測してたかのように見えた。
ゲン「……そうか……わかった……」
綾香とゲンは龍雅と別れ、先に自転車屋にもどった。
ゲンは家に戻るとそそくさと自分の部屋に戻り、ニコニコしながら日本酒を取り出した。
ゲン「ふ〜、久々に大仕事をした気分じゃわい」
その様子を見た綾香はある意味での軽蔑の眼差しでゲンを見るとそのまま自分の部屋に戻った。
部屋に戻ると綾香は布団を敷いて横になった。
左手を伸ばして鞄の中から携帯を取り出し履歴をチェックしている。
綾香「……あっ! 結奈 からだ!しかも結構掛かってる」
綾香は結奈に電話を掛けることにした。
綾香「もぅす!!結奈どうしたの?」
電話からは呆れ口調の声が返って来た。
結奈『綾香さぁ〜、また家出したでしょ?今どこにいるの?迎えに行くから……』
綾香は『迎えに来る』という内容で焦り始めた。
綾香「……あ?あぁいいよいいよ!!大丈夫!!……そうほら!今バイト中で休憩してるから!!」
結奈はその焦り具合から 何かを察したようである。
結奈『ふ〜ん……バイト中なんだ??それなら良いんだけどね!居なくなるのは勝手だけどもっと上手い嘘ついて』
綾香は更にテンパった。
綾香「あ〜、いやホントなんだって!!家出なんか考える訳無いじゃん」
結奈『……どうでもいいけど火遊びしちゃいけないよ……誰といるのかは聞かないけど……早く帰って来てね、じゃあ』
結奈の声は少しトーンダウンしたかのように聞こえた。
綾香はしばらく呆然としていた。
結局、夜も更けて行き皆が疲れて眠りに着く中、龍雅が山車小屋で一人ストライカーの修理に取り組む作業の音だけが辺りに響き渡った。
翌日。
龍雅「ありがとう。ゲン爺さん。必ず今度こそ『革命教団』を根絶やしにします」
ゲン「……うむ。よく言った。……そういえば」
ゲンは作業着の胸ポケットから一枚の名刺を出し、それを龍雅に渡した。
ゲン「龍雅……奴らの情報を手にするにはここを頼るといい」
龍雅「ありがとうございます……では……」
綾香と龍雅はディア=パノスに乗り込み、遥か空の彼方へと消えて行った。