「刺さらないだと!?」
敬は驚愕した。
刃は胸に当たっているのだが刃が通らない。
「言っただろ。見た目が人でも中身はオニだって。」
そう言うと男はナイフを胸から離した。
「・・・それよりここは何処で俺を一体どうするつもりなんだよ!?」
「慌てるな。詳しい説明は後だ。それより早く着替えろ。いつまでも寝巻のままではいられないだろ。着替えはクローゼットの中にある。着替えたら隣りの部屋に来い。」
そう言うと男は部屋から出て行ってしまった。
「そんな事があったの・・・」
勇はこれまでの経緯を説明した。
「本当に死ぬかと思いましたよ。一瞬意識が遠くなりましたし。」
「でもあんた達は運がいい方よ。爪とか牙が生えてなかったみたいだし・・・それと・・・見たんでしょ?オニの正体を・・・」
「はい・・・まさか元は人間だったなんて・・・」
部屋に重苦しい空気が漂いしばらく沈黙が続いた。
「・・・でも・・・殺らなきゃ殺られるのよ・・・何もかもお終いよ・・・」
「でも殺しているのは人間という事実に変わりはないんですよ!!人を殺す何て・・・」
今まで黙っていた松坂が口を出した。
「確かに。でも殺さなければ死ぬし、殺されればオニになるのよ!!ただ人を食う事しか出来ない化け物になって永遠に苦しみ続けるのよ!!・・・だから・・・私は・・・オニになった人を救う為にオニを殺すんだ、と考えてる・・・そうでも考えなきゃ・・・とてもじゃないけどやっていけない・・・」
秋山は今にも泣き出しそうな顔で言った。
そして立上がり部屋の隅にある引き出しから回転式のピストルを二丁持って来た。
「取りあえず部屋に戻ってよく考える事ね・・・鬼神は松坂の部屋に泊めてもらいなさい・・・あとこのリボルバーだけど取りあえず渡しておくわ・・・使い道は・・・自分で決める事ね。」