「で、清香の恋人だった日吉君を担当につけてもらったんだ」
「御隠居、彼は混乱しているようだ。僕は仕事が残っているので、そろそろ」
ムッ。つまり、何か。
衝撃を受けている暇人につきあってる時間はない、と言いたいのか。
…反論できないのが痛い。
「はいはい。それじゃ、これ、テープと相手の電話番号ね」
じぃちゃんはポケットからそれらを取り出して、日吉さんに渡す。
「確かに受け取りました。ご協力、ありがとうございます」
日吉さんはそれを受け取って深々と頭を下げると、
「君の見る世界は、どれだけ新鮮な驚きに満ちているんだろうね」
と俺に言いやがった。
バカにしてんのか…と言いたいが、その通り、と返されたらショックを受けるんだろうな、自分。
口でかなわないのは、人生経験の差で、頭の出来はイーブンだ…と思いたい。
「それでは、失礼します。宗一君も、また」
そう言って、日吉さんは帰っていった。
「日吉君が言っていたのは誉め言葉だよ」
日吉さんの姿が見えなくなって、ふと、じぃちゃんが言った。
「は?」
「新鮮な驚き、とやらを追い求めて、私はやめられないのかもしれないなぁ」
「はぁ?」
穏やかに笑うじぃちゃん。
わけわからん。
…でもまぁ、考えたって仕方ない、気がする。
じぃちゃんはじぃちゃんだ。
少し(いや、かなり?)裏がある人物、だとしても。
「…ほどほどにしときなよ」
「そうだねぇ」