門を守る務めは、なんて退屈なのだろう。
リオは軽く背伸びをする。
別に村の入口を守っているわけではないのだが、自ら進んで門番をしているゴンザレスが気に掛かったのだ。
『はぁ〜本ッ当、退屈…』
わざと大きく言うが、ゴンザレスは少しも動じない。
ただ、無言で立っているだけだった。
その視線は遥か遠くを見ている。
反応がないのはさっきまで敵同士だったからか…まだ自分を警戒してるのかもしれないとリオは思った。
『さっきまで、敵同士だったもんね…ごめん』
適度な壁に寄り掛かりリオは溜め息をつく。
『オレ、ゴンザレス。オマエハ?』
と突然口を開いた。
『え…?あ、あたしはリオ』
なんとか答えてみせる。
『リオ、サッキカラ、オレのソバニイる…怖くナイノカ?』
見下ろしてくる視線をリオは見た。
(あっ…兄さんと同じ、澄んだ眼だ…)
『ん〜少し怖いかもね。体大きいし、ごつごつした肌だし…』
途中でリオは自らの口を言い過ぎた、と塞ぐ。
『で、でも!リリーナだっけ?あんな小さな男の子があんたに懐いてるもの』
付け加え、ちらっと横目でゴンザレスに言う。
『リリーナハ…オンナノコ…』
『うそ!?リリーナってば、女の子だったの!?』
リリーナを女の子みたいな男の子だとリオは思っていたのでかなり驚いた。
それからまた沈黙が流れた。
前方に広がる森の中から鳥達の歌声が聞こえた。
『リリーナちゃん、とは仲良しなの?』
相変わらず立ち尽くしているゴンザレスに問う。
『リリーナハ、オレノタイセツナヒト…』
『大切な人…?』
『ソウダ。オレハリリーナ、ニスクワレタ』
どこか嬉しそうに言うゴンザレスを尻目にリオは座り込み、膝を抱きしめた。
『大切な人かぁ…』