二月十四日、甘い香りのせいで集中できない。何処も匂いがして外装はどれも力がこもる。
今日は女の人だけのお祭りだなぁ、話を聞いていた友人が言う。相槌を打って、少し傍観してから室内を出た。外は普段通り、風が冷たいくらいだった。
『やっぱ欲しいの?』
友人は尋ねた。笑みの余裕が顔に見られなかったので、まじめに答えるのもバカらしく思えた。
『君なら?』
友人は黙り込んで、のどを鳴らし、首を斜めに傾けた。
やがて昼の時間になり、室内はお菓子であふれていた。それらは試食を銘打って甘さを放っていた。一方、数奇な会話と沈黙の食事はお祭り参加者以外に目立っていた。
三日後、写真貼付のメールが友人から送られてきた。何か黒い固形物が写っていた。半信半疑、拡大して見てみると、それはあれだった。文字が一つも打っていなかったので、いたずらかと思い、素っ気なく『何ですか?』と返信した。返事は数分くらい遅れて届いた。
『私が食べる分のチョコ。カケラでもいる?』
画面を見ていながら、妙な気持ちになった。こういう気分が毎年当人達に訪れるのかと思ったら、二月十四日にあるべき行事だと思う理由がみえた。そして、彼女に心言葉をかけた。
今頃?