3月13日 紅白戦
【4回裏】
打席には天堂寺。カウントは2-0。
滝本、不破のバッテリーが選択した3球目はカーブだった。
真ん中から外低めに落ちるカーブを強引に引っ張った。
打球は俺の頭上を軽々と越え、左中間を真っ二つに割った。
『回れ?』
白組ベンチはそういった声が飛んでいた。
レフト菊川がボールを拾った時に天堂寺は2塁を回った。
『ショート、カット!!』
タクの声が響いた。
菊川の投げたボールを俺がカットし、すかさずタクに送球した。
肩のあまり強くない俺はワンバウンドでサードに送球した。
タクが俺の投げたボールを捕り、天堂寺にタッチしたが判定は
『セーフ!』
塁審の1年が両手を広げ、天堂寺のスリーベースが成立した。
1アウト3塁。
打席には5番布川。
布川は初球、高めのまっすぐをセンターに打ち上げた。
『タッチアップ!!』
白組ベンチからは一斉に声が響いた。
センター北条が捕球後バックホームしたが、間に合わず天堂寺生還。
3-1。
まさかとは思ったがレギュラー組が点差を広げられてしまった…
しかし、2アウトランナー無し。
『ピッチ、ここで切ろう。』
俺は滝本に声をかけた。
打席には6番三野が立っていた。
1、2球目をストレートで上手くコースをついたリュウヤはあっという間に追い込んだ。
3球目。
カーブを完全に引っ掛けた三野の打球は俺のところに飛んで来た。
緩いゴロをしっかりと捕球して、一塁に放った。
送球はおじぎしたボールだったが、橘がしっかり捕球した。
『アウト!』
この声を聞いてホッとした。
俺が初めてショートでアウトをとった。
『チェンジ!』
今井先生の声が響く。
『やりゃできんじゃねぇか!』
リュウヤが俺の頭をバシバシと叩いた。
『その調子だ』
タクもグラブで俺の尻を叩いた。
次は紅白戦最終回の5回。
打順は俺からだ!
2点差を取り返そうと俺は、気合いを入れて打席に向かった。