騙し絵の中

くま  2007-02-24投稿
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子供の頃 私の住んでいる街で、人が殺された。 被害者は27歳の無職の女性で 犯人はその女性の同棲相手の男性だったそうだ。
手で首を絞めて彼女を殺したあと 男性は首を吊って死のうとしたが死にきれず 警察に自主したという。
当時ドメスティックバイオレンスなんて言葉は誰も知らない時代で、一見新婚夫婦のようにも見える二人の結末に 誰もが首をかしげた。 過疎化の進んだ小さな田舎町に暮らす年寄り達は、愛が殺意に向かう事を知らなかった。
生前の彼女と密かに交流があった私には、彼女の言うところの
「愛がなせる技」
であると、事件を聞いた時に思ったのだった、 「愛しているからすべてを受け入れられる」 のだと。
私はみんなの知らない事を知っているので得意になり わからない顔の母親に一度自慢気に言ったことがある 「あいがなせるわざ」なのよ と、母親はなめくじに塩をかける時みたいな目をして 「馬鹿な女みたいな事言うのね」と言った。 息子に蒸発された私の祖母に いつもいびられ 、それを恨んでいるのに家を出るわけでもなく、自らの人生を歩もうとしない母親の方がよっぽど馬鹿な女だと思ったのを 今でも覚えている。



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