「あー…、良く寝た。
cカツプ…じゃないや、愛ちゃん奇遇だね?」
「ちょっとお!
…やめてよも〜っ」
「うへぇ…、マジだったんかよ」
「本当にすけべーな顔してますね、このヒト」
「眼鏡のお嬢さん、…初対面からキツイなあ、全く」
どうやらお昼寝は、白虎にとって日課みたいだ。
…運命の出会いじゃなくてホッとした。
「あのさ、白虎さん」
「ん?何かな」
「俺も一度でいいから異次元の世界に連れてってくんない?」
「構わないけど…。
腰抜かされると厄介でね」
「俺はそんなヘタレじゃねーから!」
「悪かったわねーっ。
どうせあたしは……」
「いや、涙目でいわれるとリアクションに困るじゃん…」
「うーん、どぉしよっかなぁ…、私も行ってみたいんですよね」
「じゃあ、三人お揃いでどう? 百人くらいまでなら運べるよ」
「へっ?百人???」
再びハモる私達。
「それじゃあ、ここから黄昏の世界に移動してね」
白虎が指先で切り裂いた時空の裂け目から、我々はトワイライトゾーンに足を踏み込んでいった。
「どうやって俺達を運ぶんだ?白虎さん」
「ん?こうやってさ」
瞬時に白虎の体が“ギュン!”と反転すると、またたく間に白い塊が膨れあがり、一戸建住宅なみの巨体が全貌をあらわした。
「うわ、スッゲー…ッ。
マジ神様だったんかよ、信じられねー……」
「あ〜あ、変身の瞬間撮りたかったですぅ…。スクープとして高く売れたのにぃ」
「…由紀恵って大物?」
“グルルル……グオッ”
地鳴りのようなド迫力の重低音で促され、私達は焦りながら白虎の前脚から背中に這い登った。
(じゃあ、出発だね!)
全く緊張感のない声が脳裏に響くと同時に、猛烈な勢いで疾走が始まる。
「うひゃああっ!!」
私、島崎愛の絶叫を後に残しながら、白虎の巨体は立ち塞がるもの全てを豪快に打ち砕いてつき進む。