「・・にかく・・・るしかないよ。」
「だね。」
「あとはこ・・・・かどうか・・・しよう。」
「うん」
「ほんとドジッたよね」
容子はかすかに聞こえる二人のやりとりで目が覚めた。聞こえてくる声は二人とも間違いなく子供だ。
しかもおそらく小学生、もしかしたら低学年かもしれない。
だが、今の時代は子供だからと言って油断は出来ない事は日頃ニュースをほとんど見ない容子でも知っている。
《とにかく状況がわかるまで寝たふりをしていた方がよさそうね・・・》
容子は目を閉じたまま残りの五感のすべてに神経を集中させて情報収集に努めることにした。
二人の子供達の声以外に聞こえる音は・・・・・・・・・何も聞こえない。
どこかの建物の中にいるようだ。しかもかなり密閉された空間に連れ込まれているらしい。
《やっぱりこの子達、只者じゃないわ。。。でもいったいなんだっていうの・・・》
容子は泣きたい気持ちをどうにかおさえこみながら次は今自分が寝転んでいる床の感触を確かめた。
どうやらカーペットの上に寝かされているらしい。
《こういうのって港の使われてない倉庫ってのが定番だと思ってたけど・・・さすがに子供ではそれはないか。》
そして、容子が目を覚ましたときから気になっていたもの、それはあたり一面に漂う匂いをもう一度ゆっくりと嗅いでみた。
《クリームシチュー!》
容子は改めて鼻から息を吸い込み、この食欲をとけまでもそそってくる香に酔った。と同時に妙な安心感を感じた。
《大丈夫なのかしら・・・》
意を決してそーっと薄めを空けたその目に飛び込んだ二人の子供の姿に、容子は再び気を失ってしまった。