毒舌君主[二]

73  2007-02-27投稿
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昭久は、「じゃ、俺仕事があるから」と何事もなかったかの様にその場を去ろうとする。しかし、途中何か言い忘れたのか、立ち止まり、振り返った。
「あんたさぁ、死ぬ覚悟があんなら、あんたを振った男を死ぬ気で見返してやんなよ。」
そう昭久は言い、整った顔立ちには似合わないひねくれた笑顔を浮かべた。

―それが今朝の出来事。

「でさぁ、あれからあの女の子どうしたと思う?」
修はコーヒーを飲みながらカウンター越しの昭久に話しかけた。
昭久は食器を拭きながらあまり興味なさそうに修の話に耳を傾ける。
ただ今の時刻は午後8時。今、彼らは昭久が経営している喫茶店にいる。
「昭久が帰った後に少しの間呆然としてたんだけど、何を思ったかいきなり、『さっきの人の名前は?』って聞いてくるからさ〜『あ、高杉昭久って言うんだ。ごめんね、あいつ悪気はないんだよ。ちょっと口が悪いだけで。ちなみに俺は、橋田修ね。あ、三崎駅の駅前に“流星”っていう喫茶店があるんだけど、あいつそこで働いてるんだぁ』って昭久のフォローと店の宣伝をしっかりしてあげたゾ☆えっへん。」
昭久はそれを聞いて、絶対零度のほほ笑みを浮かべ、言い放った。
「お前さぁ……………………いっぺん死ぬか?」
「ひぃぃぃ!こわいよぅ、昭久さん。」
修はわざと大袈裟にこわがってみせる。
二人で少し笑った後に修が続ける。
「でさぁ、その後にすぐ金網から降りて、『迷惑かけてすみません。』って俺に頭下げたんだよ。やけに素直にさ。それで無事帰っていったんだ。やっぱ俺の説得のおかげ?いやぁ〜俺ってば人の命を救うという偉大な事しちゃったよ。今日は気分いいわぁ♪」
「ふん、あそこで死なれたら気分悪ぃしな。」
昭久は鼻で笑い飛ばす。
その時、誰かきたようで店のドアの鐘がカラン、カランと鳴った。

続く



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