あの時ちゃんと言えてれば、後悔なんてしなかった。
僕はいつも後悔ばかりして、ダメな男だったよね。
こんな僕を見たら君はきっと…。
僕達の教室の窓から見えるまだ新しい体育館。
その中から聞こえる歌。
3年生が、卒業式に向けて最後に歌う「贈る言葉」を練習している。
僕達は高校2年生。
まだ先のことだし卒業式なんて関係ない。
そんなこと思いながら、暇な授業を受けている。
外はまだ雪がヒラヒラ舞い降りて、全ての景色を白く染めている。僕らの町は、毎年雪の降る北海道の南側の札幌市。
結構都会で、町は賑やかすぎるほど人が多い。
そんな場所が住みやすかった。
窓の外の雪をみながら、休日は何をしようか考えていた。
すると、教壇に立ち黒板になにやら訳の判らない数式を書き込んでいる先生の目を盗み誰かが僕の頭に丸めた紙を投げてきた。
紙の飛んで来た方向へ顔を向ける。
拓海(たくみ)。
中学からの親友で一緒にバカやってきた心から信じられるやつ。
拓海は俺の顔を見るとブイサインをして笑っている。
僕はその紙を拾い上げ、机の下で広げた。
紙には「朔斗(さくと)君へ。土曜と日曜スノボしに行きませんか?(笑)」と書かれていた。
僕達は冬になるとスノーボードをやりにいろんなスキー場に行く。それが僕達の楽しみだった。
僕はノートの紙を一枚破いた。
ゆっくりと静かに。
そして黒板に書かれた文字を写すふりをして破いた紙に「もちろん。(^w^)」と書いて、拓海目がけて丸めた紙を投げた。
それを受け取った拓海はゆっくり広げ、読み終わるとまた僕にブイサインをして眠った。
拓海らしい。
拓海はいつも陽気でハイテンションなやつだった。
中学でも二人で色々悪さして、警察にお世話になったっけ。
今思えば懐かしい。
もうガキじゃない僕達は高校に入ってからバカはやってない。
いや、タバコは未だにやってるな。
色々思い出してたらいつの間にかチャイムが鳴った。
今日はこれが最後の授業だった。帰る準備をして担任の連絡事項を聞いて玄関に向かう。
後ろから肩を叩かれ、振り向く。「よっ。朔斗ッ帰ろーぜぃ。」
拓海がタバコを吸うジェスチャーをして下駄箱によしかかっていた。
「しかたねぇーな。拓海ちゃんは寂しがり屋さんだから。」
と、いつものような会話で学校をでた。