母さんには言ってあるから、知っていたけど、父さんは多分知らないと思う。父さんの誕生日にボクが自分で言おうと思っていたからだ。
父さんの誕生日は、九月十二日だから、約一ヶ月後だ。誕生日記念にボクは父さんに、小説をプレゼントしようと思っていたけど、今のままじゃ無理だ。進んでいないし、原稿も持っていない。それに、今は、父さんがいない。もし、出来上がっても、渡せない。
ボクが悲しそうな顔をして、黙り込んだのを見て、先生はちょっと慌てている。
バアちゃんは、静かにこう言った。
「克、悲しそうな顔しちゃダメだ。まだ見つかってないけど、見つかるはずだから、しゃきっとしなくちゃ。男は、何事にも動じずにドンッとした態度でいかなきゃいけないんだ。先生もですよ。生徒の前で、オドオドしてちゃいけません。シャンとしてください」
バアちゃんにこう言われて、ボクは少し立ち直った。先生は照れ臭そうに、後頭を掻いている。
そのあとも、前の学校はどんなとこだったとか、先生はどんな人だったとか、基本的に前の学校の話をした。これからのことは、これから考えていこう、ということになって、先生はバアちゃんの家を後にした。
これが、ボクと先生の出会いだ。続