君に捧ぐ 〜6〜

k-j  2007-03-03投稿
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テレビに駄菓子屋が映った。ただそれだけだった。
「駄菓子屋行きたい!」
君は小さな子どものようによくそう言った。
「いいよ。しっかし本当に駄菓子屋大好きっ子だよな」
僕が苦笑しながら言うと、
「美味しいしたくさん買えるから好きなんだもん」
君はまた子どものように無邪気に笑った。
僕はそういう君が大好きだった。君のその笑顔に何度癒されたことだろう。
 歩くとき必ず手を握ってくる君。ふたりとも自転車なのに、わざわざ僕に自転車を置かせ二人乗りをせがむ君。ファミレスなどでトイレに行くと、戻ってくるときに後ろから僕をおどかそうとするけど、ほとんど途中で僕にバレてしまう君。
いろんなものが君へと繋がっていく。僕の持ち物も、街も、道も、君の幻が見え隠れする。
ふたりでよく行っていた公園に立ち寄り、ベンチに座って煙草に火を付ける。しばらくすると、不思議な気持ちになる。こうしていれば、あの頃のように君が後ろから飛び付いてくるのではないか? 何もなかったように屈託のない笑顔を見せてくれるのではないか?
振り向けば、君がいた。君は、煙草の煙のようにすぐに消えていった。
 自分を笑い、再び煙草を吸う。煙はいつもより苦かった。



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