毒舌君主[七]

73  2007-03-03投稿
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由香里は昭久が作ったハンバーグを食べ終えた。
「はぁ〜…。昭久さんが作ったハンバーグ、すっごくおいしいかった!嫁にきてほしいぐらいです。」
「はぁ?ハハッお前バカだろ?」
由香里のその言葉に昭久は笑顔を見せる。
そんな昭久を見て、修は驚いていた。
『昭久は心開いてるヤツの前でしかあんまり笑わないのになぁ。ましてや数日前に会ったばかりの女の子に…。珍しい事もあるもんだな。』
そう思い、目の前の女の子をジッと見る。修の視線に由香里は気付き、
「え?顔に何かついてますか?」
と言いながら慌てて顔をおさえる。
「違うよ。」
そんな姿が可笑しくて修は苦笑いを浮かべる。
『―俺はさ、ちょっと思ったんだよ。あ、この子ならって…』
修はそう遠くない過去に思いをめぐらす。
―病院のベッドの上で、違う人間の様に弱っている昭久。いつもの様に憎まれ口をたたく元気なんてどこにもない。
ただ、一点を見つめているだけ。
俺は、昭久の肩をつかんで問い詰める。
「昭久!ばか野郎…お前、何やってんだ!!」
昭久は、俺を見ようともしない。ただ、こうつぶやいたんだ。
「修…俺さ、取り返しがつかない事した。
修、
周りの人間をこれでもかって傷つけて
最終的には
―何が残るんだろうな?」俺にはあの時のお前の問いが、『大事なものを失った俺が生きている意味ってあるのか?』って言ってる様に聞こえたんだ。俺はあの時、昭久にかける言葉が見つからなかったんだ。だから気休めの言葉を言った。ただ俺がお前に生きていてほしかったから。
「昭久、だめだよ。まだ死んじゃ…お前、まだやらなくちゃいけない事あるじゃんか。あの約束を果たさなくちゃ…。」
―あれからお前は、あの言葉にとり憑かれたかのように、生きたくもない世界でもがきながら生きている。時折、昭久を見ていて、『果たして本当にこれでよかったのだろうか?』と胸が痛む時がある。
約束も果たし、全てを終えたら、お前はどうするんだ?昭久。

続く

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