昼過ぎのやや混んでいる電車…ウォークマンの音量をいっぱいまであげて耳をふさぐ。人の声が聞こえないように。そしてそっと目をとじて周りの人の姿もシャットダウンする。暗闇の中でっかい音の音楽だけが無意味になり続ける。
あたしは今から整形しにいく。大嫌いな自分とはもうさよなら…
不細工なだけで今までたくさん損をしてきた。やりたいこといっぱい我慢してきた。人一倍努力しても何もかも虚しいだけだった。
『人は顔じゃない…整形までして親からもらった顔を変えるなんて馬鹿じゃないか』
父はそう吐き捨てた。
じゃあもっと可愛く産んでよ。誰のせいだよ。そう思って何も言えなかった。
人は中身が大事…そんなこと口うるさく言ってたってどれだけの人が人を中身で判断しているだろう?みんな結局見た目で人を判断してるじゃないか。
嘘つき。みんな嘘つきだ。
10万…18才のあたしから言えば大金。10万あったら何ができる?10万なんでお金どのくらい働けば稼げる?そんなのわかんない。でもその10万であたしは可愛くなれる。人生やり直せる。不細工じゃない人にはわからない。人生得してきた奴には馬鹿げて聞こえるだろう。理解できますか?いつも人の目を気にして下を向いて歩くあたしの気持ちが。理解できますか?不細工なだけで諦めなきゃいけないことがどれだけあるのか?理解できますか?不細工な顔で生きるのがどんなに辛いことか…
絶対わからない。文句いいたきゃ言えばいい。あたしは可愛くなって幸せになる。やりたいことやるんだ。もう我慢なんてしない。好きなもの素直に好きって言える自分になるんだ。