黒猫にありがとう

有姫  2006-01-24投稿
閲覧数[959] 良い投票[0] 悪い投票[0]

四日目の朝、鯉に餌をあげていました。またいつものように突然コイちゃんが現れないかなぁと思いながら。
すると祖母が話しかけてきてきました。
「ママね、今日の4時過ぎに迎えにこれるんだって。」
あんだけ母の悪口を言ったのに、その言葉を聞いて私は飛びはねながら喜びました。
祖母から昨日の夕食の時に、最低でも3日は仕事が長引くと聞かされていたので嬉しくてたまりませんでした。
するとまた隣で

ミャ-オ…

と言う声が聞こえました。
振り向くとコイちゃんはちょこんと座っていました。
「ねーねーコイちゃん聞いて!ママが迎えにきてくれるの!
ママね、私のこと嫌いじゃなかったんだよ!!」
ルンルンでコイちゃんに話しかけたが、コイちゃんは全然嬉しそうじゃなかった。
私から視界をそらして何処か宙を見ていた。
「そっかコイちゃん。私が帰ってしまうから寂しいのね?大丈夫だよ、ママに行って飼ってあげるから」
そう言うとコイちゃんはものすごいスピードで門へ走って行った。ビックリして私は大声で
「コイちゃん!!?」
と叫びながら私も走って行くと、祖母が
「有姫ちゃんいったいどうしたの!?一人で何処行くの?」
と聞いてきたので
「バカね!コイちゃんを追うに決まってるでしょ!」
と言って門外に走って行った。
夢中になって走り回ると大きな桜の木の下にコイちゃんがいるのを発見した。
「もう、勝手にこんなとこ来て!さ、帰ろう。」
そういうとコイちゃんはこれまでで一番優しく『ミャ〜オ…』と鳴くと土の中に溶けるように消えてしまった。私はあまりにもビックリして「コイちゃん!?」と叫んでしまったけど、気がついたら夢中になって土を掘っていた。
もうコイちゃんに一生会えない気がして泣きながら素手で掘りまくっていた。



たぶん30分以上は掘っていたと思う。やっとコイちゃんは姿を現した。
「もう、こんなに私を心配させて…。おウチに帰って遊ぼう。
コイちゃん…。」

だけどコイちゃんは返事をしてくれなかった。
土の中にいたコイちゃんはいつのまにか真っ白でバラバラになっていた…




後から知ったけど
コイちゃんは私が祖母に預けられて三日目の朝に交通事故で死んでいたらしい。
きっと母が予定より三日も早く迎えにきてくれたのは、コイちゃんのおかげなのかも…と今思います。

ありがとう、コイちゃん



糸冬



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 有姫 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]
人気カラコン送料無料
ポイント20倍で激安!


▲ページトップ