毒舌君主[八]

73  2007-03-04投稿
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「おい、修!」
昭久に呼ばれ、修はハッと我にかえる。
「どうしたんだよ。ボーッとして。」
「悪ぃ、悪ぃ。」
修は余計な心配をかけまいといつもの様に振る舞う。「まぁ…いいけどさ。それよりこいつバカなんだぜ!」
昭久は由香里を指差して笑う。
「あー!その話は秘密にするって言ったじゃない!」修が物思いにふけっている間に、昭久と由香里は何やら二人で別の話で盛り上がっていたようだ。仲良く言い合いをしている二人を見つめ、修は優しく微笑んだ。
『俺は、ちょっと思ったんだよ。あ、この子なら答えに導いてくれるかもって。俺が答えられなかった昭久の問いの答えに、さ。』

―“昭久の心が少しは楽になるように”
修はその時、ただそう願う事しかできなかった。

由香里は、それから毎週金曜日には、昭久の店を訪れ、店を手伝う様になった。昭久は、相変わらず憎まれ口をたたいていたが、だんだん由香里も慣れてきた。何より、昭久の側にいられる事がうれしかった。
―由香里はこの時まだ知らなかったのだ。
―別れの時が刻々と近づいている事を…
『―ねぇ、昭久さん
私、単純であさはかで昭久さんの気持ちを全然考えてなかったね
―あなたを知っていく度にどんどん好きになっていく自分がいて
―歯止めがきかなくて
―今ならわかる
あなたが誰も愛せない理由―聞きたくなかった、あんなに悲しい真実を…』

続く



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