君に捧ぐ 〜7〜

k-j  2007-03-05投稿
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君と僕は出逢うべくして出逢ったんだと信じていた。運命の人と巡り逢えたのだと思っていた。
「運命って与えられるんじゃなくて、意識的にも無意識的にも、自分で決めたことなんだって。だから『これは運命なんだ』って言うのは、『これは自分で決めたんだ』っていうことになるんだって」
最近流行りのスピリチュアルなんちゃらの影響を受けたのか、君はある時言った。
僕はどちらかといえば運命論者だ。でもネガティブな意味でだ。
悪いことがあるとすぐ運命のせいにして、自分の行いを顧みなかった。自分の弱さを認めることが出来ずすぐ人のせいにしていた。
君に対してもそうだった。君の存在が当たり前になってしまった僕は、何かあるとすぐに君のせいにした。
「説教ばっかり」
君はそういって不貞腐れた。今思えば君の態度は当然のことなのに、その時の僕は、その態度に腹を立てた。「説教じゃない。注意してるんだ。仮に説教になるんだとしても、じゃあどうして説教されるようなことをするんだ?」
僕の中には、思い遣りなどという言葉はなかった。ひたすら君を批判し、自分を正当化していた。
そんな僕に、君は反発し、不貞腐れ、怒り、そして泣いた。そして泣きながら、
「……楽しい? ……私を否定して楽しい?」
君はとても悲しそうだった。僕は胸が痛くなった。違う。こんなことがしたいんじゃない。僕は君がもっともっとよくなって欲しかった。それだけだった。いや、そう思い込んでいた。

君がどこか他の人とは違う、独特な雰囲気を持っていることは初めて遊んだ日に気が付いた。
口では説明できないけど、何か違っていた。最初は個性的だなと前向きに捉えていたけど、そのうち本気で心配になってきた。直感的に、この子には何かある。そう思った。
僕らはその時お互いに付き合っていた人と別れたばかりだった。その寂しさも影響しているのだろうけど、君は僕に試しに付き合ってみないかと言ってきた。
僕は年上という立場と、君に対する不安から最初は断った。そんな安易な気持ちで付き合ったりしてはいけないと。
しかし君は応じてくれず、僕を説得しはじめた。
君の様子を見てさらに心配になった。それにやはり僕も寂しかったのだろう。結局とりあえず付き合ってみようということになった。 これがすべての始まりだった。



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