七人ミサキ?
安藤天馬は昔負った大怪我の為、体の約85%を機械化している。妖を殺すことが出来る「戒金剛」と云う物質を用いて、その体は幸司の羅喉に匹敵する。
「フッ!」
天馬が腕を振るい僧侶達の頭を跳ね飛ばした。しかし僧侶達は構わず群がって来た。
「クソ…きりがないな…」
天馬は怯えている由香利を抱き上げ御霊大樹の上まで上がった。僧侶達は二人を追いかけ大樹に登った。その時、雄叫びととともに幸司が森から飛び出してきた。
「うらああ!花の17歳、村雨幸司参上ぉ!」
叫ぶと同時に羅喉の刀身が砕け光の刀が露出した。
「羅殺剣!」
幸司は羅喉を叩き突け僧侶達を吹き飛ばした。僧侶達は粉々にされたがその肉片がピクピクと動きまだ再生しようとしていた。
「天馬!逃げるぞ、これじゃ埒があかない!」
「待て!松下さんが森の奥に…」
「ほっとけ!」
松下は森の奥を進んだ。息が切れ身体が重くなっても走り続けた
(なんだ…あの化け物は…儂が何したというんじゃ…)
そう思った時、草に足を取られその場に倒れた。周りを見回すと見覚えのない景色が広がった。
(バカな…儂はこの森で育った…儂の知らない所など無いはず…)
しかし、まだ昼間だと云うのに辺りは暗く、どこからも光が射してこなかった。松下は深い闇の中に一人だけしゃがみこんでいた。ふと耳に奇妙な音が入って来た。音はだんだん近づきそれが人の言葉である様におもえた。喜ぶように高く、エーリエリエリエリ…哀しむように低く、アーリアリアリアリ…松下に声の主達の姿を見ることはできないが、大量の気配が松下の周りを囲んでいた。そして、松下は思いだした。若き日の自分が何をしたかを。この森に棲むモノの正体も。(そうだ…あの仏像…儂が壊し…あれは…)
「ミ…サ……キ」
彼の視界が赤く染まった。
つづく