君に捧ぐ 〜9〜

k-j  2007-03-10投稿
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彼らは今、それぞれ名前が付いて大きく育っている。
黒い子猫は姫、他の2匹はラムと空。それぞれ拾ったときの倍以上の大きさになって元気に日々を過ごしている。
3匹を拾ったあの日。僕と君は彼らを抱いて近くの動物病院に行った。僕らの家は両方とも、猫を引き取ることは難しかったのだ。
動物病院なら、もしかしたら預かってくれるかも知れない。そんなことを思いながら行ったのだか、もう夜の遅い時間だったので病院は閉まっていた。
そのあとタウンページで近くの他の動物病院を調べて電話してみたが、どこも預かることはできないとの返事。僕達は途方に暮れてしまった。
そうこうしているうちに、僕のバイト先の仲のいいおばさんが猫好きなのを思い出した。とにかく今夜一晩だけでも預かってもらいたかった。そして次の日から引き取り手を探そうと思っていた。
そのおばさんに電話すると、とりあえず一晩預かってもらえることになった。
僕らは自転車のかごに子猫を入れ、おばさんちに預けに行った。 次の日に電話してみると、なんと3匹ともおばさんちで飼ってくれるという返事が返ってきた。
僕らは喜んだ。そして子猫は今や子猫と呼べないほどに成長し、幸せに暮らしている。
僕らの息子、ナイトは3匹を拾った1ヶ月後くらいに出逢った。
僕が最寄り駅から自転車で家に帰る途中。ある駐車場の脇から弱々しい声が聞こえた。自転車を止めて近づいてみると、黒と白のまだらの本当に小さな子猫がヨロヨロと僕に近寄ってきた。抱き上げてみると、子猫の顔がおかしい。目から鼻にかけて、顔の半分近くが赤く爛れていて、目尻には目やにがたくさんついていた。
「お前どうしたんだ!?」
 思わず声をかけると、弱々しく小さな声で鳴いた。身体は小刻みに震えている。何かの病気に違いない。
僕は考えることなく子猫を抱え、自転車に乗った。家に着くと、カバンの中に入れ、素早く自分の部屋に入り鍵を閉めた。
カバンを急いで開ける。明るい場所で子猫を見ると、最初の印象よりも酷い状態に見えた。
僕は台所に行き皿に水を入れ、親にバレないように部屋に運んだ。
床に置くと子猫は皿に近寄って水を舐め始めた。僕は少しほっとした。
次の日。親に事情を説明し、どうにか病気が直って引き取り手が見つかるまでの間、家で飼うことを許可してもらった。

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