彼女の名前は紗耶香。話によれば大手企業の社長令嬢らしい。あれから公園には行ってない。俺はいつものように部屋で一人だった。腹が減って近くのコンビニに行くことにした。歩いて3分の距離だ。店に入ると適当に弁当やおにぎり、飲み物をぶっこんだ。暇潰しにと思い、一冊ファッション雑誌を買った。こうみえても俺はオシャレにはうるさい男だった。レジで会計を終えて店を出ようとしたら、誰かに後ろから方を叩かれた。紗耶香だった。店の中にいたなんて気付かなかった。
紗耶香:「ねぇ。私のこと覚えてる?」そう言って静かに笑った。
俺:「あぁ。紗耶香ちゃんだよね?」俺がそう言うと、そうそう!と言わんばかりに縦に頷いた。
俺:「家近いの?」
紗耶香:「全然近いよー」
前よりはちょっと変にテンションが高かった。
俺:「俺も近いんだよね。」
紗耶香:「どっち方面?」
俺:「あっち」と俺の家の方向を指差した。すると彼女はくすっと笑った。
紗耶香:「私もあっち。じゃあ一緒に行こう。夜に女が一人歩いてたら危ないし。」
俺:「別に構わないけど、一人でここまで来たんだろ?」
紗耶香:「まっ気にしない気にしない。」紗耶香は俺の背中を押しながら店を出た。そのまま家に向かって歩いた。夜風が気持よかった。
紗耶香:「ねぇ。優人は何歳?」
俺:「俺17」彼女はびっくりしてたみたいだ。
紗耶香:「うっそ?私より年上だと思ってた。」
俺:「そんなに老けて見える?」
紗耶香:「違うけど、17には見えない。」そんな話してるうちに俺の家についてしまった。
俺:「俺の家ここだけど。紗耶香ちゃんの家何処?」紗耶香はさっきとは違う暗い顔になって沈黙した。俺はなんとなく気付いていた。多分、紗耶香は家出したのだろう。
俺:「あがってく?」彼女は頷いた。部屋の鍵を開け、玄関に入り電気を付けた。
俺:「なんもないけどどうぞ。」
紗耶香:「お邪魔します。」彼女は何かを伺いながら静かにリビングへ歩いた。
俺:「安心しなよ。俺独り暮らしだから。」
紗耶香:「えっ?そうなの?いいなぁ。」彼女は一気に緊張を解いた。