君に捧ぐ 〜11〜

k-j  2007-03-11投稿
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僕はナイトにあの日の君を重ねていたのかも知れない。

「もしかしたら赤ちゃんができたかも知れない…」
君がそう言ったのは付き合って3ヵ月ほどの頃だった。
来るものが来ないのだという。まだはっきりしたわけではなかったけど、僕の中に不安が広がった。
「まだわからないから、とにかくわかる頃になったら病院に行こう」
僕は言った。しかし君は、
「私の問題だから私がなんとかする」
「そんなもんじゃないだろ! 俺にも責任がある。つーか俺が悪いんだから……」
「いいの! 私のことなんだから私が決める」
僕は君の一方的な言い方に腹を立てた。確かに男である僕は、君の不安など想像もできなかった。君にとってはもはや邪魔者でしかなかったのかも知れない。でも僕は自分の責任から逃げたくなかった。
「もしできてたら自分だけ、いや俺らだけの問題じゃなくなるんだ。自分ひとりでなんとかしようと思わないでくれよ…? 俺は自分の責任をしっかり取りたいんだ!」
すると君は冷ややかな目で、
「なら別れて? 誰のせいでこうなったと思ってるの? もういいから関わんないで!」
「別れるのはしょうがない。俺が悪いんだから……。でもだからこそ責任を取りたいんだ。なんでわかんねぇんだ!?」
責任を取る。もう関わらないで。僕らはいつの間にか怒鳴りあっていた。
そして君は泣き出した。
「お願いだからもう私に関わらないで……!!」
僕は返す言葉を失った。君にここまで拒絶されるとは。
“もしかしたら”でこんな簡単に君との関係が崩れるとは……。
僕はショックと自分に対しての腹立たしさでどうすればいいのか解らなくなっていた。
「…ったよ。別れるよ。お前の目の前から消えればいんだろ!? あ!? それで満足なんだろ!?」
 最低だ。君を傷つけてしまったのに、さらに追い討ちをかけるように君を怒鳴る。やめろ! 僕の心が叫ぶ。
「…じゃあ最後に水を3本くらい買ってきて」
 君は僕の顔を見ないで言った。
「あ? 何それ? 俺と過ごした3ヵ月間はペットボトルの水ぐらいの価値しかねぇってか!? なるほどね。買ってくるよ。買ってくればいんだろ!」
僕はなんて愚かだったんだろう。この時に気付いていればあんなことにはならなかったのに。
僕はすぐ側の自販機で水を買ってきた。何に使われるかも知らずに……。

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