泉しげるの朝は、パチンコ屋に並ぶ事から始まる。
並んでいると、彼の友人達が『学校来るの?』と声をかける朝の風景。
彼は『出たら行かない・・・』いつもと同じ返答。
勝率は半々。
実家からの仕送は十万円。
一年生でバイトは、まだしていない。
というよりも、する気がない。
パチンコを覚えたのは、高校一年の時。
悪友に誘われ、おっかなビックリ入ってから。
生活は親に支えられていたから、負けても何とかなる。
しかし、大学生で一人暮らしの今、彼は負ける訳にはいかない。
だから彼は、出るまでパチンコ屋に居る日が続いた。
当然、友達と呼べる仲間も少い。
そんなある日。
パチンコ屋でいつものようにパチンコを打っていると、賑やかな集団がいる。
『うっせえな・・・』
負ける訳にはいかない彼には、自分の仕事の邪魔者が現れたと感じた。
しかしよく見ると、入学式に同じ教室にいたクラスメート。
騒いでいた彼等も、しげるに気付き、声をかけてきた。
彼等は二浪で、しげるは現役。一応気を使いながら、しげるは話しかける。
『パチンコは・・・やるの・・・?』
集団の一人がぶっきらぼうに『いや、初めてなんだよね。泉君は並んでいるよね。毎朝。』
『うん。生活がかかってるから』
すると集団にいた、眼鏡をかけた小太りの男が『すげぇなぁ!』と驚きの声をあげた。
しげるは、少しハニカミながら『僕が教えようか?』
賑やかな集団は、一層騒がしく手を叩いて彼を歓迎した。
その夜、彼等と酒を酌み交す事に。
彼等は四人組で、二浪という事で気が合ったらしい。小太りの男は『渡辺広』。のっぽは『赤木大助』
背の低いのは『市山功』
天パは『佐々木雄一』。
まさか彼等が、しげるの学生生活を大きく変えようとは、しげるもまだ感じていない。
翌日から、しげるの生活は彼等と共にする。
パチンコ屋に並び、朝から晩までパチンコ。
バイト・恋愛は二の次で、毎日パチンコ。
土日は競馬場。
そんな生活が半年続いた。