「藤川さん、あなたが まだ無事でよかった。警察が後で来てくれると思うので しばらく危険ですので お店からは出ないでくださいね。」 「わ…分かりました。…はいありました これです。」藤川は山積みになっている書類から野々村順子の履歴書を取り出すと西村に渡した。 「捜査協力ありがとうございます。くれぐれも気を付けて下さい。」西村は書類を手にすると店長室を出て行った。 車の爆音だけが藤川の耳にいつまでも鳴り響いていた。 「ど…どうか あの女を捕まえて下さい…あの二人も無事だといいけど…」 「店長っ何ブツブツ言ってるんですか!早くして下さいよ」 片桐響子が店長室のドアから半分だけ顔を覗かせていた。 「あ、はいはい…今行きます。…響子ちゃんもある意味恐い女だなぁ…」 藤川は震えながらレジ点検へ向かった。―――――――――― 『今夜のニュースエキスプレスは番組内容を少し変更させていただきます。早速ですが、あの忌まわしい十年前の事件の容疑者が病院の看護師二人を殺害し、脱走をした様です。女はまだ捕まっていません。近所の住人の方は戸締まりなど十分に気を付けて下さい。』テレビ局はこぞって特番を組んでいた。 『いやぁ、あの暗闇の女がまた現れましたかぁ、プライバシー保護の為と言い実名を明かさないと言ってますが私なんかから言わせてもらうと既に十年前から数えると三人も人が殺されている訳ですからねぇ、名前と顔写真を公表するべきだと思いますよ。』ニュースでは暗闇の女の顔写真と名前を公表するべきか否か討論が繰り返されていた。 「店長!マジいい加減にして下さいっ!みんな待ってるんですよっ!」片桐響子が藤川に向かって怒鳴っていた。 「ほ…ほんとゴメンよ こ…これだけでいいから見させてくれる?この事件って十年前、このスーパーで起きた事件なんだよ」