―チョコパフェをだされた時に「あ、やばい」って思った。すごく泣きそうになった。もうこれ以上好きにさせないで
私は、馬鹿だ
確実に自分が傷つく相手を好きになってしまったのだから
帰り道、昭久は店じまいがあるとの事で由香里は修に送ってもらっていた。
たわいもない会話に、時折笑い声をあげながら二人は並んで歩く。
ふとした時に由香里は昭久の事を思い出した。
聞きたくても聞けないあの事を。
無意識のうちに由香里は暗い顔をしていたのだろう。「どうしたの?」
修が心配そうに由香里の顔をのぞきこむ。
由香里は意を決し、修に尋ねた。
「…志保って誰なんですか?」
この質問に修は驚いた顔をみせる。
「志保の事、昭久が話したの?」
由香里は首を横に振る。
「いえ、お見舞いに行った時に、昭久さんが寝言で」「…なるほど、ね」
修は、少しの間何か考えた後に、言った。
「志保の事は、昭久が一番触れてほしくない事だから。俺の口からは話せない。ごめんね?」
「いえ、そんな…こちらこそすみませんでした。」
由香里は、頭を下げる。
そんな由香里の頭をポンポンと軽くさわり、修は笑顔を作って言う。
「由香里ちゃん、全然心配する事ないよ〜」
「へ?」
由香里は顔を上げ、修の顔を見つめる。
「志保は昭久の昔の女ってわけでもないし、絶対にとられる事もないよ。」
「どうして?」
この問いに、修は泣いているような悲しそうな笑顔を見せる。
「―志保はもうこの世にいない。」
二人の間に嘘みたいな静寂が訪れた。
「四年前に、自殺したんだ。」
続く