その人は、僕にこう聞いてきた。
「どこの会社の人ですか?」
にこやかに話し掛けてくるこの女の人は、僕と同い年に見えない。もっと、若い気がする。
「僕は、そこにある二階堂株式会社の、営業課に配属されたんです。名前は、秋浜桑といいます。あなたは、どこの会社ですか?」
そう聞くと、彼女は表情を崩さずにこう言った。「私は、ここから北の方にある、六角堂書房っていう、出版社のものです。私の名前は、水口朝鳥といいます」
それから、僕たちは名刺を交換しあった。
そのあとも、たわいない話をした。一時間近く喋っただろうか。空が、赤紫色に変わってきた。その様子を見て、彼女は、「もうすぐですね」と言った。僕は頷いた。
しばらくすると、僕の上司の川口充がやってきた。川口は、いきなりこう言った。
「秋浜、ご苦労さん。悪いんだけどさ、コンビニ行って、ビールとか、カップ酒とか買ってきてくれないか?金はあとで払うよ」
僕は喜んでコンビニに行った。途中にある桜並木さえ我慢すれば、すぐ近くにコンビニがある。
桜並木の前で一旦止まり、そのあと全速力で駆け抜けた。
コンビニに着くと、気をきかせて枝豆や、スナック菓子等も買った。宴はまさに始まろうとしていた。続