始まったマイナー映画は、予想以上に面白かった。
全体的にメチャクチャでドタバタなコメディだけど、そのバカバカしさに思わず吹き出してしまう。
そのうえ隣でユカリがあの笑い声を出すもんだからたまらない。
こんな笑ったの久しぶりかも。
映画が終盤に差し掛かった頃、俺はユカリの笑い声が止まったことに気付いた。
まさか寝てんじゃねぇだろな……
俺はチラリとユカリを見て――――そのまま固まってしまった。
なんだよ
なんで
泣いてんだよ……
スクリーンの光に照らされたユカリ。
その頬に光る幾筋もの涙の跡。
見ている間にも、新しい涙の粒がその上を伝っていく。
俺は、自分でも驚くほど動揺した。
まじで意味わかんねんだけど。
さっきまでバカ笑いしてたじゃん。
泣くようなシーン無かっただろ。
ユカリは俺が見ていることにも気付いていない。
眉をしかめたり、唇を噛みしめたりもしない。
ただ――
スクリーンを見つめる瞳から、止めどなく涙がこぼれていく。
やめろよ――
そんな顔すんな―――\r
完全に無表情だけど、いや、完全に無表情だからこそ……胸が締め付けられる。