いつも笑ったり怒ったり表情豊かで――
今までいろんなユカリを見てきたけど、こんな顔は初めて見た。
笑いすぎて零れる涙とは違う。
映画を観て零れる涙とも、違う―――\r
俺にわかるのはそこまでだ。
お前みたいに、簡単に当てらんねんだよ。
泣いてる理由がわからなきゃ、どうしようもないだろ?
でも
どうにかしたいんだ
そう思った時には、もう手を伸ばしていた。
手の甲でグイッと頬を拭う。
「!!」
驚いたユカリが俺の方へ顔を向けた。
その拍子に、また涙が零れ落ちる。
俺は無言のまま――ユカリの右頬に左手を添えて、涙を拭った。
その間に左頬を涙が伝う。
右手も添えて拭う。
ユカリがまばたきした瞬間にまた零れる。
両手で包み込むように拭う。
また、零れる――
なぁ
零れた涙は
何度でも
拭うよ
でもさぁ
涙を止めるには
どうしたらいい?
俺は、泣き続けるユカリにキスをした。
できるだけ優しく、できるだけ甘く。
そうすることで泣き止むなんて、思ったわけじゃなくて
ただ見てられなかったんだ。
ユカリの涙の前で、
俺はあまりに無力で―――\r
他にどうすることも出来なかったんだ。
それから俺達は、エンドロールが終わるまで唇を重ね合わせていた。