「こんにちは〜!ヤマキさん、いる〜?」
ある一軒の民家の前。フロンが中に向かって呼び掛けるが全く反応無し。
「あれぇ?……あの〜!フロンですけど〜!」
……し〜ん。
やはり何の反応もない。
フロンは困ったような表情で俺の方に向き直る。
「……お出かけしてるみたいです。一旦出直しましょう」
俺はそれなら仕方ないなと頷く。
「あのぉ〜……」
いつから居たのだろうか。俺たちの後ろに人が立っていた。
「……ヤマキさんにご用ですか?」
なんだか頼りなさげに色白な男は俺たちにそう尋ねてくる。
「そうですけど……。あなたは……?」
フロンが尋ね返すと、男はうっすらと笑みを浮かべながら答えた。
「はい……。私はヤマキさんの留守を預かっている者です。ヤマキさんなら昨晩からお帰りになってないんですよ。なんでも妹のヒナさんが昨日山に出掛けたっきり帰ってきてないんだそうで」
それを聞いて顔色が変わるフロン。
「ヒナちゃんが……!?あ、あの、山って裏山のことですか?」
「はい。町の裏にあるハナヤ山ですが……」
男の言葉を聞きおわるより先にフロンは俺の手を強く引き、強引に引っ張っていく。
「うぉっ!!な、何だよ!?どうしたっうだよ!?」
「ヒナちゃん達を探しに行く!!」
「でも探すったってどうやって……?」
俺の言葉も聞かずにフロンはずんずんと山の方に向かって歩いていく。
もうすぐ、日が暮れる頃だった。