首都の北西に展開した騎士団は、今まさにモンスターの大軍と衝突しようしていた。
その少し前。
会議室では皇帝に招集された騎士団の団長達が、意見を交わしているところだった。
戦闘を行える騎士団員の総数、稼働できる陸送艦の数や稼働時間。モンスター達の構成。どのようにして迎え撃つか、など。
「やはり、陸送艦は足止め程度にしかならないか」
「しかたあるまい。ある程度の攻撃手段は備えているがあれは本来、戦闘用に造られた物ではない。スピード、装甲、エネルギーの変換効率。全てに於いてまだまだ輸送艦の域を出ない」
「遠征中のフィーナ騎士団はいつ戻る?」
「夕暮れ時だ」
「そうか、フィーナ騎士団とフィン総団長が戻ってくれば…」
数ある騎士団の中でも、精鋭達が集うのがフィーナ騎士団は大陸屈指の実力。そして、そのフィーナ騎士団の団長の名がフィン=マックール。鮮やかな金髪から『黄金の騎士』の異名を持つ男だ。
「…よし。会議は以上だ。これほど大きな戦は近年全くと言っていいほどなかった。全員生きて帰ってこい。解散!」
そして、現在。
一般市民の避難も終わり、閑散とした首都にゼノスはいた。
会議の後、ゼノスに言い渡されたのは防衛線を突破し首都内に入り込んだモンスターの処理だった。
ゼノスが最前線で暴れれば騎士団達の連携が乱れるからなのだろう。
首都の北西から大気の揺れが僅かに感じ取れる。
顔を上げ
「いよいよ始まったか」
ゼノスは一人呟いた。
ゴブリンは胴を真っ二つにされたところで生き絶えた。
「これで何匹目だ。騎士団どもは何やってんだ」
空は夕焼けに彩られ、陽は大分傾きそろそろ沈もうとする頃。
ゴブリン、オーク、デュラハン、サイクロプス…。気付けば辺りはモンスターの死体がゴロゴロと転がっていた。
「この数はいくらなんでも多すぎだろ」
そう言いながら、また一体モンスターの死体が増える。
首都の北西、最前線。
血の匂いが充満し、動かぬ人と異形が地を埋める。
「団長!首都内に侵入したモンスターは多数!こちらの死者はもう千を越えています!」
「予想以上の戦力が集結してるな。大至急、周辺諸国に応援の伝令を飛ばせ!」
別の騎士が走ってくる。
「団長!フィーナ騎士団が…フィン=マックール総団長が到着しました!戦況は五分のところまで持ち直しています!」