―(き…綺麗…)
ビデオを差し出して来た男の子を見て蛍は一瞬にして視線を奪われた。
「マイナー系だからあんまり知られてないんですけど、結構良いですよコレ。」
男の子はビデオを眺めながら話た後蛍にもう一度差し出した。
「え…?」
「あ、すいません出てきてびっくりしますよね。」
「え?う、ううん!えと…ありがとう…」
蛍はゆっくりそれを受け取った。
「あっれ?けーちゃんもうとっくにあがりの時間だろ?30分くらい前だっけか?」
蛍の後ろから中野が出てきた。
「いや、そうなんですけど家帰っても暇だし何か借りて帰ろうと思って」
「けーちゃん独り身だもんな〜」
中野がからかいながら言う。
「直也さんと一緒にしないで下さいよ。それに直也さんそろそろ結婚も考えなきゃいけない年でしょ」
「な…っ失礼な!」
「ぷっ」
「あ〜ちょっと蛍ちゃんまで〜」
「中野くんチャラチャラしてるから彼女にも逃げられるんだよ〜」
「そうですよね。いかにも落ち着きのないおじさんだし…」
「お〜い!おめぇらさっきから言いたい放題なぁ〜
俺はまだ26だ!!」
「ハハっ冗談ですよ」
「ほんとかよ〜俺休憩入るわ!後3時間もあるし〜。」
「サボっちゃダメだよ〜」
「へ〜いへい。何だよ〜蛍ちゃんは味方だと思ってたのにさ〜」
「お疲れ様です。」
手をヒラヒラ振りながら中野は去って行った。
(ふ、2人になっちゃった…)
「で…」
「へっ?!」
「借りるんですよね?中野さん休憩入っちゃったし、俺レジしますよ。」
「あ…ありがとう」
「いえ、じゃあカードお預かりしますね。」
「はい」
「…あれ?」
機械にカードを通そうとした彼は急に手を止めた。
「え?どうかしました?」
「あ、いえ。ちょっと驚いて…蛍ってこの漢字なんですね」
「?…はい」
「俺もなんです。
読み方は違うんですけどこの漢字でケイって言うんですよ。」
―そう言った彼は今までの綺麗さとはまた違った表情をしていて…
彼の笑顔に私は
激しい様な…切ない様な…そんな感覚で締め付けられた。
あの時の感情を何て呼べばいいのかな?
分かんないけど…きっとこの時から始まってたんだよ。この恋は―…