ヤス#12
開いた口が異様に大きく、そして、血のように赤い。ヤスは全身が粟立ち、恐怖を覚えた。
「じゃあ、何者だ!脅かしやがって」
「だから、驚いたかと聞いておる」
「ああ、驚いたよ。釣りの邪魔だから消えてくれ。
ヤスは恐る恐るそのバケモノに背を向け、竿を持った。だが、気になって仕様だない。まだ、あの岩の上に佇んでいるのだろうか…早く消えて欲しい。はいているサルマタの股間に黄色い染みが出来ていた。ヤスはそっと振り向いた。すると、そのバケモノが赤い口を開け、ヤスの真後ろにいたのである。ヤスは絶叫した。絶叫して尻餅をついた。また、藤壺の上だった。
「ぎゃああああ!」
ヤスは情けなくなった。情けなくなって、涙が出てきた。そして、その涙は怒りに変わった。
「このバケモノ!消えろ!」
ヤスは竿を振りかざし、バケモノの脳天めがけて振り下ろした。しかし、岩を叩き、真ん中からポキンと折れてしまった。バケモノはいつの間にか右に移動していた。
「ハナタレ、何をする。ワシがお前に何かしたか?」
「うるさい!消えろ!」ヤスは、半分の長さになった竿に精一杯の力を込めバケモノの脳天めがけて打ち下ろした。