ヤス#13
だが、再び岩を叩いただけだった。
「ハナタレ。ワシを殺す気か?」
ヤスは必死だった。バケモノの言うのは当たっている。確かに、このバケモノは何もしていない。だが、驚いたヤスは失禁した。それに腹を立てていたのである。男たるもの、怖くて失禁するなど、あってはならない事だった。ヤスには殺意が溢れていた。何度打っただろうか。竿らはささくれ立ち、原形を留めていない。ヤスは肩で息をしている。汗が吹き出し、雫が集まり、筋となって頬を伝っていった。
「ハァハァハァハァ…」「ハナタレ。お前にワシは殺せんよ」
ヤスは戦う武器をなくした。そして、足元の拳大の石を拾った。
「お前は何者だ!」
「ワシか?ワシはサトリじゃ」
「サトリ?変な名前だ」ヤスは相手が油断するのを待っている。波が岩に当たり、砕けてしぶきが上がった。ヤスとサトリの顔に飛んできた。サトリは「あっ」と言って、手でそれを避けようとした。隙ができた。ヤスは石を思い切り投げつけた。
ゴッ!…当たったか!「だから、さっきから言っているだろう。お前には、ワシは殺せんよ」
サトリは移動していたのである。