ヤス#14

チャーリー  2007-03-18投稿
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ヤス#14
ヤスは半分ヤケクソのように石を拾っては投げた。その度、当たったか!と思うのだが、サトリは悠然として、赤い口で笑うだけだった。ヤスは次第に馬鹿らしくなった確かに、バケモノはこの世の物では無い形相をしている。かつて見たことの無い生き物を見て、最初は怖かった。怖くて失禁すらした。だが、襲って来る訳でもなさそうだ。サトリは目の前に座って、岩場を這い回るフナ虫を、じっと見ている。
ヤスは気を取り直した。そして、釣りを諦め、潜ってアワビを採ろうと思った。サトリに背を向けると、持っていた石を放り投げた。「ぎゃっ!」
ヤスの手から放り投げられた石がサトリの脳天を割り、サトリは絶命していた。
何言う事だ。あれだけ奮闘しても、かすり傷すら与えられなかったのに、簡単に死んでしまった。
ヤスは、その血を流したバケモノが、急に哀れになり、島の麓まで引きずって行くと、穴を掘って埋めた。流木で墓碑を作ってやり、掌を合わせてナムアミダブツを唱えた。
御床島は完全に潮が引いた。ヤスは水中メガネと磯カギを持ち、水の中に入っていった。腰まで浸かったところで、藻を引き千切り、メガネの内側を丹念に磨いた。

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