「あ〜、今日もだるかった。あのキム八先公め。今に見てろ。」
キム八先公―岡田龍介は国語の教師で、あだ名からしてかの有名ドラマファン。でも担任のクラスは2―B。
「お〜い、か〜いと!」
「なんだ、また森か。」
「ぬぬ、また、だって?…まぁ埒が明かないから…ねぇねぇ、映画見に行こうよ、今度の休みにさぁ。いいでしょ?」
くったくのない笑顔で幼児がおもちゃをねだるように聞いて来る。俺を誘う時はいつもこんな感じだ。
「…わかった。いけばいいんだろ。タイトルによっては断固拒否だからな。」
「そのあとは買い物に付き合ってよね。」
…なんだか、なぁ。
そのあと世間話をしていつもの十字路でお別れ。今日もこんな風に終わるはずだった。
「失礼。天崎海斗とは、君の事かね。」