「綺麗、、、ねぇ、月がキレイだよ。」
「あぁ。本当に。」
「あたしたちを見てるみたいだね。」
「んー、あたしたちをじゃなくて、月はみんなを見てるんだ。」
「そうだけどさっ。」
「でも好きだよ。月。
優しくて、落ち着いてて、癒される。」
ふと彼の顔を見ると、ほほえみながらも真っすぐに月をみていた。
(サギだよねぇ、、、)
見つめるあたしに気付いたのか、そのほほ笑みをあたしに分ける。
たまらず、話を続ける。
「この月は、ずっとあたしたちを見続けてくれるかなぁ?」
「うん、きっとね。
日の光が届かなくなっても、今日のこの月の光は、僕達の上に輝いているよ。
むしろ、そうであってほしい。」
「シュウ、、、。」
繋いでいた手は、今、彼の背中にある。
何度彼の名を呼んだかわからない。
何度あたしの名を呼ばれたかわからない。
そっと髪を撫でられ、優しくキスをくれる。
「行きますか?」
「うん。」
浅くうなずく。
彼は、あたしの手をしっかり握る。
あたしも負けじと握りかえす。
「ありがとう。」
「愛してる。」
涙が止まらない。
彼の目も潤んだまま。
息を調える。
彼が静かに言った。
「合い言葉は、、、」
『満月がかける前に!!』
若い二人の声は、話し声から悲鳴に変わり、暗い闇へと吸い込まれていった。