ヤス#15

チャーリー  2007-03-19投稿
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ヤス#15
そうする事でメガネが曇らないのだ。海水で濯ぐとメガネをかけた。磯カギを持って、ゆっくりと海中に潜った。海中は一切の音が消え、シンシンという音だけが響いた。早速、サザエを見つけた。一旦、水面から顔を出し、大きく息をすると水しぶきを上げて潜った。一個、二個三個…あるわ、あるわ、一潜りで五個のサザエが採れた。今度は岩棚の裏側を覗いた。平べったい石のような物が貼りついている。アワビだ。しかも、大きい。ヤスは磯カギの取手の方を岩とアワビの間に差し込み、軽く押した。大きなアワビがユラユラと落ちてきた。二十センチはある。
ヤスは心の中で「やった!」と叫んだ。先ほど殺してしまったバケモノの事はとうに忘れてしまっていた。
ヤスは夢中で潜った。潜る度に、サザエやアワビが難なく採れるのだ。漁師を自負する少年が夢中になるのは仕方の無い事だった。二時間は潜っただろうか。網の中は獲物で一杯になっている。ヤスはまだ、潜りたかった。潜れば潜るだけ採れるのだ。
ヤスは熱中しすぎた。ここが潮目だという事をすっかり忘れていた。潮の流れは引き潮と満ち潮で変わる。だが、ここは潮目で、その変化が分からなかったのだ。

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