暇の潰し方2

あこん  2007-03-19投稿
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俺は今、河原にしゃがみ込んで足元の小石達と睨み合いをしている。
結局、来てしまった。
いや、あれは拉致とでも言うべきか。
帰りのHRが終わり、立ち上がった俺の首を、日下部はあろうことか流木を器用に使い絞めたのだ。そのままここまで引きずられて来た。
「…空が青いぜ。」
痺れ始めた脚を伸ばし、遠い目で空を見上げる。今日は曇りではあるが、俺には見えた。どこまでも青い空と、光り輝く太陽が。
「笠木くん、これなんか近所のタローくんに似てません?」
現実逃避、強制終了。
「…どれだ?ってかタローくんとはどちら様だ?」
日下部の持つ小石を覗き込むと、確かに何かの顔に見えなくもない。点が3つ。『?』の形だ。
「文鳥ですが。」
「これのどこをどう見れば鳥類になるんだっ。」
「この角度がベストかと。」
「変わらん!」
今朝の断末魔といい、今のタローくんといい、こいつの感性は斜めを…いや、90度真横を行ってる気がする。ある意味天才だ。結局は変人だ。
「おぉ、これはベスに。」
「…誰だ?」
「近所のゾウガメです。」
もう何も言わず、小石を見せてもらう。今度は線が三本不規則に並んでいた。
ところでこいつの近所の住人について知りたくなった。頭痛の種になりそうなんで尋ねるといった愚かな行為はしないが。
「石ー石ー賢者の石ー。」
調子はずれな歌を歌いながら、日下部は移動する。そのうちにどんどん川に近付いていった。
これはリョウコ、こっちはサトル、と人間らしい名前が出て来た辺りで俺は日下部の方を見た。
「ってあぶねぇな!」
日下部は足元しか見ておらず、もう少しで川に落ちていた。今は俺が襟を掴んで支えている状態である。
「あ、危なく海の藻屑となるところに。」
「なるかこんな水深30センチ以下で。」
びしょ濡れにはなるだろうが。
「ちゃんと周りを見ろ、危ないから。」
「見てたんですけどねぇ、周囲の石は。」
「お前は首輪に鎖つけた方がいいかもな。」
「え、そんな趣味…」
「ない!」
神に誓ってない。あくまでたとえ話だ。
そんなこんなですっかり夕暮れ。本当に石拾いで時間を潰してしまった。
今日の収穫、日下部宅近所の動物シリーズ全16種。
いつの間にやら俺もついつい楽しんでしまった。
明日もやろう、という申し出は丁重に断ったけども。



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