同じ痛みを持つもの同士だからこそ分かり合える気持ちもある。
俺は車の窓から、ゴミ置き場にたかる烏を見ていた。
車が静かに病院の前で止まった。
母さんは慌ただしくでていったが、俺は無駄にとろとろしていた。
俺はタクシーが病院から出ていくまで、じっとその姿を見送っていた。
「拓海君。」
俺はゆっくり振り向いた。目線の先に久しぶりの顔があった。
「こんにちは。」
カノンの母親だった。
「お久しぶりです。」
俺は軽く会釈して言った。
「わざわざ学校早退してきてくれたの?」
は?
「まぁ…」
「まだ病室には上がらない?」
「病室…ですか?」
「ええ…。もし良ければおばさんとお茶でも飲みにいかない?」
「…かまいませんけど…」
じゃあいきましょう、とカノンの母親は病院の駐車場に向かって歩きだした。
病室…?誰が入院したんだ…
どうして頭が回らなかったんだろう…
わかっていたら、すぐにでも側へいったのに…
俺ってぐず。