いつもと変わらない午後。
ガラスの窓越しには、憂鬱そうな顔をした私がいた。
そう、ちょうどあの日も……今日のような雨模様だった。
大学の帰り道、毎日通ったこのカフェ。
珍しいけれど、午後になると客足がほとんど無くなる。
でも、そうやって活気がないところが私は結構好きだった。
真珠のような、雨の雫が、
ガラスを伝っては、流れ落ちてくる。
その小さな雨音が、凛とした静寂の中に響いていた。
私は、深いため息をつく。
マスターは、穏やかな顔をして、コーヒーの豆を炒っていた。
やがて、ほのかに香ばしい香りが店内に立ち込め始める。
この香りを嗅ぐと、私は思い出す。
雨の降る昼下がり、びしょ濡れでカフェに飛び込んで来た彼のことを……。