「失礼。天崎海斗とは、君の事かね。」
突然、タキシードをまとった血の気の失せた三十代後半の男が話しかけて来た。
「そうですが、なにか用でも?」
「君を食いに来たのさ」
男は禍々しい笑顔に、犬歯ばかり発達した歯を剥きだし襲いかかってきた。
(え…?)
見る間につめの長く尖った手が迫ってくる。
(や、やばい逃げなきゃ…)
幸い自宅へ帰る道をふさがれていなかった。もちろん全速前進。
「ふむ、スピードはまあまあだ。」
あろうことか、男は楽々と追いついてきた。まるっきり余裕の顔をして。
そのとき、民家の庭の柵をみて、思い付いた。特徴からしてバンパイアなあの男に杭を刺せば…。「くらえオスコウモリ!」
近くにあった杭を抜き、海斗はおもいっきり突き出した!