「よう、白虎さん。
へへ、…愛は俺に触られる方を選んだぜ。 まぁ、男らしく諦めな」
「な、何言い出すのっ!」
「えええーっ!!
愛さん達がそんな関係だなんて……。
かなりショックぅ…」
「だーかーらーっ、違うっていってるでしょーっ!由紀江まで、も〜っ!」
「まぁまぁ、叫ぶのはおやめなさいな。
この幻界では精神(こころ)の動きが形を結びますからね」
私達がいさかいを始めたとみるや、玄武のお爺ちゃんが柔和な笑顔で止めに入った。
「いかにも。
ほれ、足元が揺れておろうが。 その影響は地殻変動となって現世に跳ね返るのじゃ」
「……朱雀。
分かってるんなら地震を止めて来いよ。
お前か玄武しか出来る奴はいないんだからさ」
流石に不謹慎なニタニタ笑いを引っ込めて白虎が言うのへ、気取った態度の朱雀が口を開きかけた。
ただ、その言葉にいち早く反応したのは中原健次である。
「地震を止めるだぁ?
へっ、このヒゲオヤジにそんな力あるんかよ、マジで」
「健次やめなってばぁ、…神様にケンカ売るなんて」
「ふぅむ…。 わしは一向に気にせんが、オヌシ、なかなか口が減らん様じゃな」
こめかみをピクつかせていた朱雀は、言うそばから健次の首根っこをヒョイと掴んでいた。
“ギュンッ”と瞬時に体を反転させ、まばゆく輝く真紅の鳥に姿を変えた朱雀は健次をぶら下げたまま天空高く羽ばたいてゆく。
あれよあれよと見る間に空中の点となり《カッ》とひときわ眩しい閃光を放った後、二人の影は跡形もなく消え去った。
「ふん、…朱雀を怒らせた愚か者は五百年ぶりか?」
「そうですな。
まぁ、私らが怒るよりは怖い目に遇わずに済むでしょうね、青竜さんや」
「え!お爺ちゃんが怒った事あるんですか?」
「ああ…。
大洪水になってな、後始末が大変だった…」
「うそっ…」
守護神がなぜ災害を…
……と突っ込むのはかろうじて思いとどまった。