「えっ!?マサならとっくに行ったよ!!」
「まだ来んのやけど...。ポケベル鳴らしても返事ないし...。もうちょっと待ってみるわァ。ありがとう。」
そう言って電話を切った。
幸せそうなカップルを横目に見ながら彼を待ち続けた。冷たい風が私にまとわりつくように私の心にも冷たい風が吹いていた。手も氷のように冷たくなり、自然と涙が落ちていた。たまらず家に帰ろうと待ち合わせの場所から離れようとした時、ポケベルが鳴った。マサからと思い急いでバックからポケベルを出した。『マサ来た??カズ』マサからではなかった。カズに返事を返そうと公衆電話に向かった。
「美咲!!おい!!美咲!!」
ふりかえるとシンゴがそこにいた。
「美咲!!ごめん。マサもうちょっとしたら来るから。どっか入ろう!!」
私達は近くの喫茶店に入り、マサを待った。しゃべらない私にシンゴは気を使ってくれているのか、色々話しかけてくる。頼んだミルクティを全部飲み干した時、彼が息を切らして走ってきた。
「ホンマにごめん!!ちょっと寄るとこあったから。」
「俺ほな行くわ!!」
シンゴは私とマサを見届けると帰って行った。
「美咲??怒った??」
「連絡くらいできん??何時間待たせる気よ!!」
「ごめんて!!ホンマにごめん!!」
深く下げた頭を上げると同時に机に小さな箱が置かれた。きょとんとする私に彼はその箱をそっと渡した。彼から受け取った箱を開けてみると、そこには指輪が入っていた。何も言葉にならなかった。ただ見つめるだけの私に彼は箱から指輪を出し、左手の薬指にはめてくれた。
「ええやん!!サイズ分からんかったから時間かかったわァ!!」