冬───。
｢ただいま。｣
｢おかえり、健ちゃん。｣
家に着くと母が出迎える。そのまま健治は台所へと向かう。
俺は河原健治。西坂第二中学校の三年。受験シーズン真っ只中だ。今日も放課後勉強を続け、我が家に着いたのは７時１５分。この時期になると外はもう真っ暗だ。まぁ学力的には受験は余裕なんだが家にいるとどうしてもやりたいことがある。だから遅くまで学校で勉強をしているわけだ。
｢さぁ健ちゃん、いっぱいたべてね。｣
椅子に座ると母が作りたての夕飯を出してくれる。
｢健治、どうだ？勉強の方は。｣
｢大丈夫。心配ないよ父さん。｣
そういって健治の隣で先に夕飯を食べていたのは父・一彦。近くの病院で医師として働いている。
｢まぁ余裕があるのはいいが…っと電話か。｣
玄関で電話の電子音が鳴り響く。父が受話器を取ると音がやむ。
しばらくすると父が真剣な顔で戻ってきた。
｢瑞穂。今そこで事故があったらしい。かなり重傷だろうから来てくれと。｣
｢あら、わかったわ。いってらっしゃい。｣
そういって父は駆け足で出ていった。
｢父さんも大変だね。｣
｢そうねぇ。でもここ辺りじゃああの人位腕のいい医者もいないからしょうがないわよ。｣
そういうと母は洗い物に移る。健治は｢ごちそうさま。｣と一言いうと自分の部屋に向かった。
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