春と夏は恋の季節だと、オレは思う。
オレの場合は、夏の時に恋をするようだ。今まで、付き合って来た女は、たいていの場合、夏に出会った。今から、オレがどうしても忘れられない恋物語を話そう。
オレが高三の時だ。
受験勉強にひぃひぃ言ってた夏のある日、通ってた塾で模擬試験があった。その日オレは、シャーペンを忘れた。前に座っていたヤツに声を掛けて、オレは、シャーペンを貸してくれと言った。そいつは、快く貸してくれた。ありがとうと言って、受け取った。
テストをズタボロの結果で終わらせたオレは、そいつに、シャーペンを返した。そしたら、そいつは、不思議なことを言った。
「あたしと、あんたは多分同じところに行く。返すのは、入ってからでいい。お互いガンバろ」
ハァっていう風な顔をしているオレを無視して、そいつは、教室をでていった。よくわからんまま、オレも片付け始めた。教室から出たオレは、一階に降りて行き、自販機を膝で蹴り、缶コーヒーを出した。別に金がなかったからではなかったが、ここの自販機は、金を入れなくても強めの衝撃を加えれば、飲み物が出てくる。
椅子に座ってコーヒーを飲んでいたオレに、近づいてくる気配があった。肩を叩かれた。続