タイムリミット 〜それから〜

 2007-03-25投稿
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いつもの場所はパーキングエリア。
どこへ出かけるわけもなく車の中で話をするのが定番だった。話をしながらたくさんキスした。気持ちいいキスを何度も何度もした。会う度に人目も気にせず車の中でセックスした。
「ウッ」
あの人の漏らす声が好きだった。
人目を気にしない私達はどこでもセックスしてた。人目なんか気にならなかった。愛情を言葉で表現できない代わりに体で確かめあった。幸せだった。確かに幸せだった・・・。
何年目かのクリスマスイブ前日。

今思うとあれが運命の日だった。

仕事であの人の街へ行く事になりホテルで待ち合わせ、たわいもない話といつもの優しいセックス。何一つ変わりなく過ごしたのに別れ際、抱きしめたあの人から離れたくなかった。ただ離れたら次は会えない気がして。
「別れる訳でもねえのに。また会うだろう。帰るぞ」
いつものバイバイのはずだったのにそれがあの人との恋人として会った最後の日となった。
幼い私には年上のあの人を信じられなかったのだ。
あの夜、結婚に憧れていた私は、
「あなたの子供産んであげようか?」
と投げ掛けた。
会社を持っていたあの人は、
「もう少し大きな仕事をしたいからあと10年はおまえに寂しい思いをさせるだろう。だからあと10年後に嫁に来いよ」
と私を抱き寄せおでこにキスをした。

あの時より大人になった今ならあの人の言葉の意味が痛い程分かるのに。あの時のあの人の愛情も痛い程感じるのに。
私が幼さすぎたのだ。子供だと遊ばれぬようにとあの人を疑う事しかできなかったのだ。あの日から私から連絡する事を止めた。あの人からの連絡は削除する癖がついた。

数ヶ月後、忙しいあの人とは違いいつも側にいてくれる男ができた。セックスの相性も悪くない。薬指へのダイアも断らなかった。
そんなある日あの人からまた電話が鳴った。声が聞きたくて我慢できなかったのに強がり癖は治らない。
「結婚する事にしたの。」
優しいあの人の、
「そうかい」
の一言に涙がとめどなく流れた。本当はすぐにでも連れ去りにきて欲しかった。
優しいあの人がそんな事してくれる訳もなくあの人と出会った海でみたようなどこまでも広がる青空の元、私はウェディングドレスに身を包まれた。



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