それから、堰を切ったように俺は、藍と会わなくなってからの事を話した。デザインの勉強で行き詰まった時の事、大学の友人の事、なかなか上手くいかない就職活動の事、それから……彼女と別れた事。
俺は喋ってから、思わず手で口を押さえた。
「悪い…なんで、こんな話したかな」
藍は、特に表情を変えなかった。
「ううん、別に。何も気にしないで。これまでの一真の事、聞けて良かった」
藍が、言った。
藍は…どう、思ったのだろう。不快に感じたのだろうか。
窓から外を見ると、空が暗くなりつつあった。
「あれ、もう…こんな時間か。映画とか、いろいろ行こうかと思ってたんだけどな。これから、何か見ようか?」
俺が誤魔化すように笑いながら言った。だが、藍は表情を変えずに言った。
「いいの、今日はきっと話だけって、思ってたから」
話だけ…?
「いろいろ沢山、話すだけで終わると思ってた。今までの長い時間があったから」
藍の目にふと、暗い影が落ちたような、そんな気がした。
そういえば、なぜ突然、藍は今になって俺と会おうとしたのだろう。
今まで明るかった藍の空気が、少しずつトーンが陰っていく気がした。
永遠の離別が迫っているような…。