ふつふつと、込み上げるものがあった。
それは、以前に過ごした時間があるからかもしれない。だが、その藍から感じる空気を感じた時に抱いた感情は、その感情は紛れもない事実だった。
藍と…もう一度会いたい。
そんな気持ちが俺の中で芽生えていた。
「今日は楽しかった」
藍が言った。
「よかった。今の一真にまた会えて」
「藍…あのさ…」
藍が席を立つ気だと感じて、俺は間髪入れずに言葉を繋げた。
「また…会えないかな」
藍は、俺の言葉を予想していたのか、特に表情を変えずに首を小さく振った。
「私、結婚してるの。だから、もう会えない」
俺の目の前の景色が全て真っ暗になった気がした。
藍が、「さよなら」と言葉を残して、席を立ったのを、ぼんやりと記憶していた。
それから何日か経った。
何も変わらなかった。内定のもらえない日も…別れた彼女との関係も…何もかもが変わらなかった。
ただ、あれからずっと、藍の事だけが頭からついて離れなかった。
今までよりも余計に俺のもやもやとした気持ちは大きくなるばかりだった。